くしやきさんが好きをお届けするブログvol.7【万能の神は見てるだけ】
もしも世界が終わるなら……やり残したことはたくさん思いつくと思います。
それをすべて終わらせることなんてできやしないから、自分のなかで大事なことから……それとも大事な人から、思いつけるといいのですが。
皆さんはそんな場面では、いった何を求めますか?
私はGLとBLとブラコンとシスコンの欲張りセットですね。
というわけで今回読んだ【万能の神は見てるだけ】は、ぽてろんぐ 様(長芋 様)のWeb漫画になります。ニコニコ静画さんに投稿されていて、本編は全15話完結済みの作品です。
”悪魔と仲良しの神父と、天使をつれた殺し屋のおはなし。”
ニコニコ静画【万能の神は見てるだけ】作品紹介より抜粋
ハイテンションな悪魔さんに魂をくれと迫られる神父さんの愉快な日常パートと、とある復讐を果たそうとする殺し屋について回るペットな天使さんのシリアスパートからなります。
とはいえ愉快な日常にしれっと挟まれるシリアスや、シリアスなのにコメディな会話劇などなど読んでいて飽きる隙を与えない物語なので、15話の本編はあっという間です。
今までもなるべくネタバレをしないように紹介しようとやってきましたが、今作はさてどうしようかしらと悩み中です。
【万能の神は見てるだけ】という一見どこか突き放したような冷たいタイトルに関してとか。
殺し屋と神父の関係性とか。
語りたい。
でも下手を打てばネタバレなの。
というわけでひとまず漠然とした感想を軽く垂れ流します。
怒涛の展開に情動をぶち動かされるし、タイトル回収にギャン泣きするし、コメディパートでひとり爆笑するし、っていうかGLとBLとブラコンとシスコンが同作品平面上にありながらどれも素敵ってなんなん?
エモって200種類くらい意味があんねん、とみなさんご存じかとは思いますが、たぶん今作でそのうちの122くらいは網羅できます。
はい。
といったところで、登場人物を紹介して自分の低表現力をごまかすお茶を濁しますね。濁りは旨味だ……!
腐った者を殺し回る殺し屋さん(左)と、それに付きまとう付き従う天使さん(右)。
相手がいかに腐っていようとも己の所業が罪であると理解し、さりとて逃れるつもりなど毛頭なく、自らがやがて―――あるいは今にだって裁かれていいのだとそう言い放つ殺し屋さんが、天使さんからはとても尊いものに見えたようです。
”あなたが捕らえられ裁かれる日がきたら
手を下すのは私でありたい”
―――
”だから…お願いしますどうかその時まで
そばにいさせて下さい”
天使さんの懇願(一部抜粋)
ニコニコ静画【万能の神は見てるだけ】1より
もうこのセリフだけで百合スキーは尊死しかねません。
こんな関係のふたりが織りなすシリアスパートです。
読みたくなったでしょう。
一方の神父サイド。
なんでも叶える契約を対価に死後の魂を迫る悪魔さん(左)と、それをのらりくらりとかわす神父さん(右)。
飄々としながらも優しく慕われる神父さんにはなにかニオうところがあるようで、悪魔さんはそんな彼に興味津々です。
口を開けば『魂ちょーっだい♡』と迫る悪魔さんと、持ち前のスルースキル・空気読め(ま)ない力によってそれを手玉に取る神父さんのやり取りはGLパートで重々しくなった心を少し軽くしてくれます。
しかしながら全編を通してやや重い題材を扱っているので、シャイニングばりに隙間に差し込まれる「あ、こいつはこいつでなんか抱えてるな」感は悪魔さんじゃなくても興味津々になること間違いなしです。
あ、いま検索しましたね?
なんならもう一回URLを張り付けておきます。
”万能の神は見てるだけ / ぽてろんぐ おすすめ無料漫画 - ニコニコ漫画 (nicovideo.jp)”
さておき。
こんな二組のそれぞれの時間を、交互に描くような形で進行する今作。
改めてですが、本編はたったの15話です。サクッと読めます。
おまけ含めて55話ありますが本編は15話です。
本編を読んだ方は無条件で残りのおまけを読みたくなる呪いにかかりますが本編は15話なので、どうぞ空いた時間にでもお気軽にお読みください。
以上、私の大好きについてでした。
次の大好きでお会いしましょう。
くしやきさんが好きをお届けするブログvol.6【戦隊グリーンは目立たない】
世界を救うだなんて大層なことを言うつもりはない。
ボクはただ、君を笑顔にしたいだけなんだ―――
なんて大層なこととは縁遠い、とあるヒーローの話をします。
今回読んだ【戦隊グリーンは目立たない】という作品は、『にがだんご』様によるWeb漫画になります。
ニコニコ静画のほうで連載中であり、現在第45話+αまで読むことができます。
不遇系ヒーローコメディです。
突如として怪人という人類の敵が出現するようになった世界。
そんな日本のさいたまにある最果て県には、安寧戦隊という零細戦隊がありました。
ただでさえ売れていなくて赤字続きな安寧戦隊の中でも絶望的に知名度がないのが安寧グリーンです。それどころかあまりの人気のなさゆえに、いざ駆けつけてみれば敵には悔しがられ子供には泣かれる始末。
しかし実は彼こそ並みいるヒーローのなかでも最強クラスの力を持ち、その強さゆえに『怪人が避け続けてついに存在を忘却された』悲しき存在なのです……
「いいんだよ…」
「いざってとき…」
「本当に街に危機が迫ったときに」
「ちゃんと守れれば…」
グリーン屈指のヒーローっぽいセリフ。なお基地は全損した。
(ニコニコ静画【戦隊グリーンは目立たない】第14話より)
彼はそんなことを言っていますが、戦隊のメンバーや一部の怪人なんかはちゃんとその強さを知って信頼やら畏怖やらを向けています。
だから『孤高のヒーロー』とかでは全然ないのですが、なにせ目立てない。
能力も植物を操る触手攻撃で、地味というか卑猥というかもはや怪人側というか。
食うにも困るけどタバコ代だけはなんとかねん出するダメ人間。
それが彼です。
さてそんな今作ですが、彼の不遇さだけではなく、他の登場人物たちの魅力がたまりません。
シンプルな造形ながらもキャッチーで強そうな怪人たち。
それぞれに個性的で魅力的なヒーローたち。
彼らのやりとりをメインに描かれる話の中で、どんどんと好きが増えていくこと間違いなしです。
そこでメインとなる登場人物たちを、作中からの引用とともにご紹介させていただきます。
まずはもちろんこの方。
支持率にして2%!
つぶやきったーのフォロワーは司令官だけ!
握手会に人っ子一人並ばない!
敵幹部や隣町のヒーローとかから事務員だと思われがち!
強く生きてください。
そしてお次はこの方。
熱血主人公、安寧レッド!
ただひとりヒーロー業だけで食っていける堂々の支持率!
現れれば敵も被害者もにっこにこ!
怪人と聞けば即座に駆け出す人の話を聞かないヤツのくせに怪人遭遇率ナンバーワン!
一方で彼は、ひとりひとりが一個戦隊同等クラスの力を持つとされる安寧戦隊の中では最弱です。だからこそ逆にほかのメンバーがあっさり瞬殺するような怪人にも苦戦して、そんな姿がまたヒーローっぽくて支持されます。
最弱が最強の能力(植物)に対しては相性抜群(炎)っていうのもなんだかアガりますよね。
次は赤系統つながりでこのお方。
モテたいからヒーローやってるチャラホスト、安寧ピンク!
女性支持率圧倒的!
女性とイチャイチャしてるせいで業績伸びない!
あとなんか怖いくらいネコにもモテモテ!
ひそかに一番まっとうないいやつ!
グリーンのことを親友と呼ぶ彼は、チャラくてウザいですがとてもいい人です。
チャラいけど男女問わず優しいし。
能力もバリアで守る力だし。ウザいけど。
なにげに一番の推しかもしれない。チャラウザいけど。
あれ? ピンクなのに女性じゃないんだ、と思ったそこのキミのご要望にお応えして次は女性に登場していただきましょう。
鬼畜度S級合法ロリ、安寧イエロー!
自分から怪人のねぐらを襲いに行く危険人物行動派!
握手会ではカレーを食わす!
仲間との模擬戦でも果敢に首を狩りに行く!
酒を飲んだら手が付けられない暴れん坊!
怪人を拷問して何をしているのかといえば、見ての通りS心を満たしています。
そもそもヒーローになったのも怪人を好き放題できるからという疑惑がある人物です。かわいい。
コメディ色の強い今作で、たまにグリーンと微ラブコメってる貴重な人物でもあります。そいつタダ飯ぐらいの緑ニートですよ……?
続いて戦隊最後の一人。
ロリコン!
イエローに性的なイタズラをしようとして粛清されがち!
ほかの街では怪人『変態仮面』として絶賛指名手配中!
黙ってれば美人!
今作における流血描写の九割九部を占める鼻血担当です。
子供大好き。
イエロー大好き。
大好きッッッ!
自重しろ。
そして最後に、こんな面々を束ねるこのお方。
苦労人、司令官!
戦隊きっての苦労人!
基地はぶち壊されました!
車の運転クソ下手!
戦隊の操縦もってのほか!
あと麻雀弱い。酒にも弱い。
日々赤字とメンバーの素行不良に悩まされる苦労人。
まともな一般人の顔をしているが、もともと「これなら楽して金儲けできるんじゃね?」という思考から安寧戦隊を立ち上げている。
安寧戦隊の名前の由来は、親から譲り受けた不労所得―――もといアパート『安寧荘』から。怪人の出現による人口減少のせいで住む人がいなくなったらしい。
といったところで、一通り序盤のメインとなる人物は紹介できた気がします。
ほかにも敵幹部さんや隣町の戦隊のレッドさん、グリーンのファンらしい少女、新幹部として抜擢されたエリートゴリラなどなど……魅力的な方々が続々と登場します。
まだまだ連載中の作品なので、ぜひ今からでも追いついて、次の更新を待つだけの哀れな生き物になりましょう。
ちなみにこの作者さんは短編集も投稿していて、そちらもとても面白いです。
個人的には浦島太郎が好き。目(笑)。
そんなこんなで。
以上、私の大好きについてでした。
次の大好きでお会いしましょう。
くしやきさんが好きをお届けするブログvol.5【玲緒っぽいらじお】
ふと、寂しいなと思ったとき。
人の声を聴きたいなと思った指先が、知れず求めるものがある―――
諸君、ラジオを聴こうじゃないか。
というわけで今回視聴したのは、同人ゲームサークル『ふぐり屋』様の提供するWebラジオ【玲緒っぽいらじお】です。
ニコニコ動画で最新第121回(+α)までを無料で視聴できます。
ラジオとはいうものの2016年時点ですでに更新停止となっています。そもそも題材となる『その花びらにくちづけを』というR18百合ノベルゲームシリーズは2006年に生まれた超老舗タイトルです。
百合界の古典的作品とさえ、今は言ってしまってもいいでしょう。
さてそんな作品のWebラジオ。
ゲームに登場する『玲緒』という人物の中の人を務める声優の『杏花(あんずはな)』様がパーソナリティを務めています。とても声が可愛い。
だから【玲緒っぽいらじお】というタイトルなのですが、基本的には『玲緒っぽい人として頑張る杏花さんを応援する』というのが主な内容です。
嘘ですが、おおむね間違ってはいません。
ラジオの経験もなく右往左往する玲緒っぽい人。
ときにはゲストと絡んだり、ゲストのいない回をなんとか乗り切ったり、ゲストといちゃついたり、ゲストのいない回に精神を病んだり、ゲストのいない回にゲストを切望したり、ゲストのいない回にお菓子をゲストに見立てたり、ゲストのいない回に個人的な友人をブースに侍らせたり―――
ミカ女メイト(リスナー)の合言葉は「この子ひとりじゃかわいそうだよ!」
しかし続けていく中で著しい成長を迎え、ラジオのパーソナリティとしての風格を身に着け、持ち前の唯我独尊を開放していく様がとても感動的です。第一回から聴き返すたびにほろりとくること間違いなしですね。
そんな玲緒っぽい人の魅力はもちろんのこと、『っぽい人』として登場するゲストさんたちもまた魅力にあふれています。
中でも、玲緒の恋人である麻衣の中の人の『和泉あやか』様が登場する回はまたこれがたまらなく尊い……
作中で恋人役というだけでエモーショナルがゆりんゆりんなのに、このふたり、とても仲睦まじいのです。麻衣っぽい人がいると露骨にテンションが上がる玲緒っぽい人はもうなんか……付き合ってんのか……? という気分にさせられます。
もう『っぽい人』っていう設定忘れて素じゃん!? みたいなやり取りを聴かせられたら感涙に溺れて永眠できそうな気さえします。
これは百合豚の背負う業です。しかたない。
今作は原作である『その花びらにくちづけを』を知らなくても存分に楽しめる声優ラジオとなっています。とりあえず声優さんかわいいかよ……という気持ちになれます。気が付けば杏花さんのファンです。ぜひ皆さんも聴いてみてください。
ちなみにちょっとえっちでとってもゆりんゆりんな原作とはちがって全年齢です。
原作はR18ですが、あまり好みじゃない方にもお楽しみいただける全年齢向けの作品もございますので、どうぞ興味がある方はお調べください。
とりあえず、なにか耳さみしいな、というときにでもご気軽にご視聴してみると声優沼が足元にまで迫ってくると思います。あとは意を決して飛び込むだけ……
以上、私の大好きについてでした。
次の大好きでお会いしましょう。
くしやきさんが好きをお届けするブログvol.4【Not So Shoujo Love Story】
人を見た目で判断するのは悪しき行為ですが、しかし一方で風聞や目につく振る舞いというのはその人に近づくべきか否かを判断するには十分だと考えられています。
誰かに悪印象を持った時に、自分が誤解をしているかもしれないと思うのはとても難しいことでしょう。
というわけで不良×優等生百合です。
学園モノの王道とでも言えるこのカップリングは、どうやら海外においても知られているようです。
今回読んだ【Not So Shoujo Love Story】は、Curryuku 様の描くまさにそういった王道百合マンガです。『WEBTOON』という海外のマンガ配信サイトで無料で読むことができます。
ひとまず、画像をお借りしつつ冒頭の展開をご紹介しましょう。
少女漫画が大好きで、自分も少女漫画みたいなキラキラの恋がしたいと夢見ている主人公の『Rei Chan(レイちゃん)』。彼女は学校一のハンサムボーイである『Hansum Ochinchin(ハンサム オチンチン)』にあこがれていました。
ある日そんな彼女がハンサム君の厄介な追っかけ連中に絡まれて彼女らをぼこぼこに叩きのめしていると、そこへ一方的にライバル視している学校のマドンナ的存在である『HANNA(ハンナ)』がやってきます。
そして彼女はレイちゃんに、ハンサム君を追いかけるのはやめるようにと迫ります。
「ライバルにイジめられる主人公イベント……!」と思うレイちゃんですが、彼女はどうやら厄介な追っかけに絡まれたりするレイちゃんを心配して言っているようでした。
そういう最初だけ仲良く見せて後で裏切るタイプのクソ女(偏見)のことが大嫌いなレイちゃんは、そんな彼女の胸倉をつかみ上げて言います。
「そのカワイイおカオをぶん殴られたくなかったらだぁってろ」
なにせレイちゃんは顔がイイので迫力満点です。暴言を吐かれて震えるハンナに、(へっ、見ろよこの女ぴぃぴぃ泣き出すぜ)とまで思うレイちゃんでしたが、しかしハンナは―――
―――と、むしろなにか喜ぶ始末。
かくして始まる、不良(ヒロイン)と優等生(ヒロイン)の非少女漫画的ラブストーリー。
”少女漫画の恋じゃない!”(私によるエキサイト翻訳)のタイトルはここからくるわけですね。
つまり王道百合漫画です。
優等生として周囲の期待に応え続けてきたハンナは、どんな目で見られても自分を貫くレイちゃんに憧れのようなものを抱いています。
百合漫画で百回は読んだ文脈。
そういうのでいいんだよ。
しかもご覧の通り絵が死ぬほどきれいで可愛い。
ひたすらにキャラの顔がいいのにコメディターンの吹っ切れ具合が異常。
最高のラブコメか……?
強いて難点を挙げれば英語で書かれているということですが、簡単な単語を追いかけてそれとなく文章を理解できるくらいには割と平易な英文です。構文を説明しろと言われたらちょっと無理ですが……
とりあえず絵と「なんか日本でもよく聞くな」という英語を拾っていけば、授業中に眠ったことのない人なら多分読めると思います。
まずは読んでみるのです。
ぜひ。
百合は世界各地に広まっているので、言語の壁に立ち向かう気合があると世界が広がります……日本でさえ網羅できないのに……百合しゅき……
以上、私の大好きについてでした。
次の大好きでお会いしましょう。
くしやきさんが好きをお届けするブログvol.3【少女の望まぬ英雄譚】
誰しも生きている中で、これだけはどうしても成さねばらならぬのだという大いなる運命を持ち合わせているはずだ。
それは例えば使命であったり、あるいは己の欲求からくるものであったり……いずれにせよ、どんな人生を歩んでいても自分が自分ならきっとこれは変わらなかったと、そう思えるようなこと。
というわけで今回はサイコパス百合の話がしたいのでします。
今回読んだ【少女の望まぬ英雄譚】は、ひふみしごろ 様のファンタジー戦記百合モノとなります。
『小説家になろう』というサイトで全話読むことができる上に、本編完結―――ようするに皆さんも読みましょうっていうことですね。読みましょう。
とりあえず四の五の言う前に、文体や雰囲気をお伝えするためにあらすじ文を引用させていただきます。
” クリシェ=アルベリネア=クリシュタンド――アルベラン王国将軍。
当時追い詰められたアルベランを持久させ、その後の広範な版図拡大、大陸統一の中心となった人物。軍事史上最高の天才として語られ、彼女の魔術的発明は英雄の時代を終わらせた。その絶大な武勲と、現在にも伝わる彼女の魔術的遺産から、現在においても比する者なき英雄として広く知られている。
反面、彼女が異常者であるという記述も散見され、当時の文献を紐解けばその冷酷さや無慈悲さが至る所に書き記されている。そんな彼女を冷酷なる殺戮者とする見方も多くあり、その実際は――「えへへ、ベリー、今日は何を作るんですか?」
「そうですね……今日のメインはクリシェ様のお好きなカボチャパイにしましょうか」好きなことは料理と食事と甘えること。
得意なことは人殺し。
――少し頭のおかしな少女が優しい人間に囲まれて、幸せを見つけていく。そんな過程を描いたお話。”
小説家になろう【少女の望まぬ英雄譚 ※本編完結】あらすじより引用
文章や設定としては、小説家になろう様の人気作品の中ではわりと硬めな部類だと思います。かといって難解ではなく、むしろ戦場のストラテジーやキャラクターたちの動きが目に見えるほど読みやすい平易な文章です。
本って文字読むの大変じゃん……という方でも割と読めます。多分。なにせ私は読むの好きなので……すまねえ……。
ところで今回、私はサイコパス百合の話をすると宣言しています。
今作の主人公がそうだと私は認識しています。
もっとも作者様自身は、調べた中で必ずしもそうと言い切れないのでやんわり『少しあたまのおかしな少女』としているのだとそうおっしゃっていますが……
なんにせよ、今作の主人公であるクリシェという少女には、共感性がひどく欠如しています。
これをしたら相手がどんな風に思うのか、これを言ったら相手にどんな風に伝わるのか、そういうこと概念がそもそも理解できていないので、世界を合理と論理で解釈する―――つまり、クラシックカーにロマンを感じる人へ「でも現代の自動車のほうが進歩してますよね」と本心から純粋に言っちゃうような感じです。
しかも合理というのがあくまでも自分自身を基準としているので、自分の世界を円滑に回すためなら人を殺すのもいとわないし、それが他者に露見すると困ったことになるから隠ぺいする……みたいな行動原理で動きます。
そのうえ自分が優れているという強烈な自負があるので、自分の住む村のなかで『かわいらしくお行儀のいい女の子』であるための努力を惜しみません。
これは他者から見ると異様に映ることで、実際それに驚いたり嫌悪したり、そういう描写もあったりします。
しかしあくまでも、クリシェには共感性がないだけであって悪人ではありません。
自分に利益を与えてくれる人(例えば母親、父親、祖父など)には自分なりの最大限をお返しするという、『やさしさ』があります。そうあるのが社会であるのだと理解して、平穏に生きていることを好ましく思っています。
そうならないのはあらすじの時点で明らかではありますが……
さてそんな彼女の周りには、とても素敵な人物たちがいます。
歪な性質を有する彼女を、けれど心から愛し、歪さを抱えながらも『普通』に生きられるようにと根気強く接してくれた母親がその筆頭です。
そのおかげで彼女は社会という人間の関りを理解して、不完全ながらもそこに溶け込んで生きることができるようになりました。
またのちに出会うベリーという名のメインヒロイン―――彼女もまた母のようにクリシェの歪を愛情で包み、そしてクリシェに楽しいとか、おいしいとか、愛だとか、そんな感情を教えます。
共感性の欠如し、物事を合理と理性で捉えるあたまのおかしな少女には、しかし確かに大切な人を慈しみ、愛する心があるのだと諭します。
こういった人物によって、クリシェは幸せを知ります。
この物語における『幸せになる』というのは苦難や試練を乗り越えた果てに幸せを手にするというだけではなく、彼女自身が、そばにあった幸せというものに気が付くという意味合いもあるのかもしれません。
”―――少し頭のおかしな少女が優しい人間に囲まれて、幸せを見つけていく。そんな過程を描いたお話。”
小説家になろう【少女の望まぬ英雄譚 ※本編完結】あらすじより引用
要するに、この文章以上に今作を語るものもそうはなさそうです。
ちなみにこの作品ですが、まずまずの残酷描写があるので苦手な方はお気を付けください。一話をお読みになって、ちょっと無理かもと思ったら残念ながら向かないかもしれない……悲しいですが……
以上、私の大好きについてでした。
次の大好きでお会いしましょう。
くしやきさんが好きをお届けするブログvol.2【地球制服エイリアン】
あまりに唐突なことで心停止してしまう人もいるかもしれないけれど、人類にとって極めて重要なことについて話そうと思う。
―――学生百合って、あるじゃないですか。
百合の中でも学生同士の、瑞々しい青春が目にまぶしいやつです。
浴び続けると百内障になってあらゆる女子生徒どうしの絡みが百合に見えてくるというとても危険なジャンルではありますが、今回私が読んだ【地球制服エイリアン】もまたそういう代物です。
高校二年の夏の終わり―――
放課後の屋上で―――
―――宇宙人に出会いました。
そんな感じの冒頭から始まる短編学生百合漫画です。
正確にはニコニコ静画の『百合の短いの集』というものの一部になります。
著者は 有頂天個人 様。ニコニコ漫画や氏のtwitterなんかで読むことができます。
本当は今回その有頂天個人 様そのものについて語ろうかと思っていたのですが、あれもこれもとやっていてはキリがないのでとりあえず、私がこの方を知るきっかけとなった一作について語ります。
さてまず、私を「好きかも……っていうか好きだなぁ」から「しゅきぃ……♡」に堕とした1ページを画像をお借りして紹介させていただきます。
これはとても何気ないコマで、実はとても複雑な伏線が……とかそういうことはないです。
ただ私はこういう何気ない会話で親しさを見せつけられるとたまらなくなってしまう人種なので、この吹き出し6つが致命傷だったというお話です。
そしてこの作者様は、こういう何気ない会話をそれはもう当たり前のようにちりばめます。会話に限らずちょっとした絵の変化だとか、そういう繊細に散りばめられたものがたまりません。
目を見張るドラマティックな演出だとか、溜めに溜めて見開きドーン! みたいなのはむしろ少なくて、けれど時間経過の中で「あ、ふたりの関係はこう変わってるんだな」とすごい伝わってきて、そこにたまらない説得力と物語を感じるのです。
今作は短編の中で一年という時が経過していて、途中には季節の移り変わりを歩むふたりを吹き出しもなく描くようなシーンがあったりします。
夏の終わりと夏始まり―――そのふたつの地点のふたりを並べて比較してみるだけで、人類は語彙力を喪失することになるでしょう。
なりました。
しゅき……♡
ところで今作、なんとただの学生百合ではありません。
主人公ふたりの片方―――fig.1だと右の黒髪の女子は、実はエイリアンなのです。
曰く「地球の制服がかわいいから」という理由で地球にやってきた彼女ですが、実は秘密の任務を抱えていて……秘密を打ち明けられないまま傍にいることの罪悪感や、自分の中に芽生えた感情と任務との板挟みで苛む葛藤、そして最終的な彼女の結論と結末は学生百合とだけ呼ぶわけにはいきません。
ただそのどれもが、大いなる意志だとか大層なことではなく、宇宙人も含めた人間の内や中で動いています。
そしてこの作者様は、人間同士の関係の最たるものである会話だとか、些細な動作だとかそういうものがとても素敵です。
つまりどういうことかといえば、
しゅき……♡
もしもあの吹き出し6つが刺さった方がいらっしゃいましたら、ぜひ有頂天個人 様の他作品も読んでいただくことをお勧めします。
絶対に損はしないことでしょう。
以上、私の大好きについてでした。
次の大好きでお会いしましょう。
くしやきさんが好きをお届けするブログvol.1【お姉さんは女子小学生に興味があります。】
突然ですが、連想クイズです。
ふとしたときに欲しくなって、そうでないときもあればうれしくて、なにはともあれ誰もが大好き―――といえばなんでしょう。
そう、おねロリですね。
いわゆる百合というジャンルの中でも、年上の女性(=おね。お姉さんから)と幼い少女(=ロリ。ナボコフ氏の小説『ロリータ』から)によるカップリングのことです。
今回私が読んだ【お姉さんは女子小学生に興味があります。】は、現存するおねロリ作品の中でも最強、ないし最狂の一柱として知られている作品です。
主な内容としては、ロリコン高校教師「みのり」(28)とナチュラル小悪魔系小学一年生「小恋(ここ)」(6)というふたりの人物の(すくなくとも恋愛という要素に関してのみ言及すれば)とても純粋な年の差ラブコメになります。
ロリに性的興奮を覚えるおね。そしておねを無自覚に、あるいは自覚的に挑発し翻弄するロリ。しかしときにはロリがおねの大人の魅力にときめいたり、自分の幼さを憂いたり……そんなお手本のようなおねロリが楽しめる作品です。
著者は 柚木涼太 様、出版は竹書房さんで、現在では第8巻(2022/05/17時点)まで刊行されている連載中の作品となります。ストーリアダッシュさんやニコニコ漫画さんなどのサイトでも読むことができますよ。
中でもここでは、単行本第1巻収録部分を話題に取り上げようと思います。
ここから書かれるすべてのことは、第1巻の内容であると認識してください。
ではまず、個人的なハイライトページを画像をお借りしてご紹介しましょう。
見てお分かりの通り、仕事に疲れて帰ってきたみのりが小恋に踏まれて英気を養うシーンです。
仕事に疲れて帰ってきたみのりが小恋に踏まれて英気を養うシーンです。
この後には、
「来世は幼稚園の足ふきマットになる」
(”お姉さんは女子小学生に興味があります。”第1巻より)
という名言も飛び出します。
深いですね。
ここで賢明なる読者の皆様は、もしかして自分は恐ろしいものを目の当たりにしようとしているのだろうかとろりめくことでしょう。
なにせこれが本編冒頭4ページ目の出来事です。
ですがご安心ください―――これは序の口です。
入口にふさわしい軽いジャブです。
この後には『お手洗いになろうとするみのり』や『幼女の尻を求めて同居人の胸をかじるみのり』や『スク水をズボズボしたいみのり』、『小恋を孕むみのり』、『小恋とノーパンを見せ合うみのり』などなど……想像を絶するおねロリの暴力が待ち受けています。
そう、みのりはただロリコンであるだけでなく並々ならない性癖(誤用)の持ち主なのです。『興味があります。』なんて澄まし顔で言える次元には少なくともない。
それが、よくおうちに遊びに来るご近所さん、という強属性持ちの飛び切りのロリである小恋と出会ってしまったのですから、すべては起こるべくして起こるのだとしか言えませんね。
さてそんなおねロリの電波塔こと【おねしょ】(公式略)ですが、ぶっとんだみのりと恥じらいを知らぬ小悪魔(大悪魔)な小恋のおねロリ以外にも見どころはたっぷりあります。
なにせ登場人物がみんな魅力的(ロリに関してはモブでさえ気合の入り方が違う)なので、きっと誰もが推しを見つけられること間違いなしです。
なかでも主要な人物を、追加で三人ほど紹介します。
まずはみのりの同居人のバンドマンにして高校時代の先輩である「ゆう」
ブラジャーはフロントホック派(仮)。
女性にモテるタイプのイケメンさん。それなのに結構ピュアで、みのりに『ふるえるネコの手()』で遊ばれたり、いっしょにツルツルにしようと誘われて絶叫を上げたりしています。
彼女は今作随一の常識人であり、ロリコンであるみのりのストッパー兼ツッコミ役です。彼女がいなければ第1巻が終わるまでに5回は打ち切りになっていたでしょう。
先輩とみのりの、互いの距離感を信頼しあっている感がむんむんと伝わってくる遠慮のないやり取りは、先輩後輩百合っていいよね……とおねロリに染まり切った心を浄化してくれます。同居に至った経緯とか、第1巻時点でも興味がそそられますよね。
なにより、みのりの恋愛それ自体には否定的ではないというスタンスや、仲は良くとも彼女がみのりに恋愛感情を向けないだろうという安心感がたまりません。おねロリという障害が多い恋路を歩むみのりにとって、彼女の存在はとても大きいことでしょう。
個人的には、彼女を一番推しています。
さて続いては、小恋のママさんです。
とてもお若くおっとりとしたママさんは、たまに見せる乙女チックな表情が読者の心をつかんで離しません。
ちなみにみのりが大好きでも親子丼(鶏と鶏卵、サーモンとイクラのように親子を一緒にいただくこと)に興味はないです。
。
彼女は小恋の親ということもあって、頻繁にみのりをドキドキさせます。主にいろいろな行為が露見するかもしれないという意味で。
しかし彼女は持ち前のおっとりさと、そして見た目は優しいお姉さんなみのりの『高校教師』という肩書によっていつもまんまと都合よくあらあらうふふと受け入れてくれます。彼女もまた、おねロリには欠かせない人物ですね。
最後に、小恋の同級生である「ヒメ」をご紹介しましょう。
彼女は第1巻におけるもうひとりのロリとして登場します。
そして彼女は小恋へと並々ならない感情を向けています。
ふたりはコッコ、ヒメメ、と互いを呼びあう、とても仲良しなお友達です。
つまりロリロリです。
だから小恋を横取りしようとするロリコンおばさんに敵意を向けていて、同じロリだからこそできるスキンシップでみのりを泣かせたりします。
けれどそういうスキンシップを気軽にできるということは……という、どうしても悲しい気持ちになってしまう人物でもありますね。
おねロリにおけるおねの、『ちゃんとした恋のライバルとしてのロリ』というのは当たり前にいそうであまり見られないキャラクター性かもしれません。
ところで彼女はみのり討伐にあたって先輩からの助言をもらって、それが成功したことから先輩を「ゆう姉」と呼んで慕うようになったりします。
彼女は小恋とのロリロリだけでなく、先輩とのおねロリの波動をも感じさせます。
続巻では罪作りな先輩との絡みも増え、どんどんと彼女の魅力は増していくように思います。良くも悪くも開幕からフルスロットルなみのりと小恋の恋愛模様と同じように、彼女もまたとても興味深い人物です。
そんな素敵なキャラクターたちによって繰り広げられるロリコンのロリコンによるロリコンのためのおねロリラブコメ【お姉さんは女子小学生に興味があります。】
おねロリが読みたくなったときはもちろん、自分の性癖に自信がなくなったときにも燃料を補給してくれる逸品です。
ちなみに表紙はこんな感じ↓
もしも書店なんかでお目にかかることがありましたら、みなさんぜひ手に取ってみてくださいね。
以上、私の大好きについてでした。
次回の大好きでお会いしましょう。