娯楽感想文

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くしやきさんが好きをお届けするブログvol.3【少女の望まぬ英雄譚】

 誰しも生きている中で、これだけはどうしても成さねばらならぬのだという大いなる運命を持ち合わせているはずだ。

 それは例えば使命であったり、あるいは己の欲求からくるものであったり……いずれにせよ、どんな人生を歩んでいても自分が自分ならきっとこれは変わらなかったと、そう思えるようなこと。

 

 というわけで今回はサイコパス百合の話がしたいのでします。

 

 今回読んだ【少女の望まぬ英雄譚】は、ひふみしごろ 様のファンタジー戦記百合モノとなります。

 『小説家になろう』というサイトで全話読むことができる上に、本編完結―――ようするに皆さんも読みましょうっていうことですね。読みましょう

 とりあえず四の五の言う前に、文体や雰囲気をお伝えするためにあらすじ文を引用させていただきます。

 

” クリシェ=アルベリネア=クリシュタンド――アルベラン王国将軍
 当時追い詰められたアルベランを持久させ、その後の広範な版図拡大、大陸統一の中心となった人物。軍事史上最高の天才として語られ、彼女の魔術的発明は英雄の時代を終わらせた。その絶大な武勲と、現在にも伝わる彼女の魔術的遺産から、現在においても比する者なき英雄として広く知られている。
 反面、彼女が異常者であるという記述も散見され、当時の文献を紐解けばその冷酷さや無慈悲さが至る所に書き記されている。そんな彼女を冷酷なる殺戮者とする見方も多くあり、その実際は――

「えへへ、ベリー、今日は何を作るんですか?」
「そうですね……今日のメインはクリシェ様のお好きなカボチャパイにしましょうか」

 好きなことは料理と食事と甘えること。
 得意なことは人殺し。
 ――少し頭のおかしな少女が優しい人間に囲まれて、幸せを見つけていく。そんな過程を描いたお話。

 

小説家になろう【少女の望まぬ英雄譚 ※本編完結】あらすじより引用

少女の望まぬ英雄譚 ※本編完結 (syosetu.com)

 

 文章や設定としては、小説家になろう様の人気作品の中ではわりと硬めな部類だと思います。かといって難解ではなく、むしろ戦場のストラテジーやキャラクターたちの動きが目に見えるほど読みやすい平易な文章です。

 本って文字読むの大変じゃん……という方でも割と読めます。多分。なにせ私は読むの好きなので……すまねえ……。

 

 ところで今回、私はサイコパス百合の話をすると宣言しています。

 今作の主人公がそうだと私は認識しています。

 もっとも作者様自身は、調べた中で必ずしもそうと言い切れないのでやんわり『少しあたまのおかしな少女』としているのだとそうおっしゃっていますが……

 

 なんにせよ、今作の主人公であるクリシェという少女には、共感性がひどく欠如しています

 これをしたら相手がどんな風に思うのか、これを言ったら相手にどんな風に伝わるのか、そういうこと概念がそもそも理解できていないので、世界を合理と論理で解釈する―――つまり、クラシックカーにロマンを感じる人へ「でも現代の自動車のほうが進歩してますよね」と本心から純粋に言っちゃうような感じです。

 しかも合理というのがあくまでも自分自身を基準としているので、自分の世界を円滑に回すためなら人を殺すのもいとわないし、それが他者に露見すると困ったことになるから隠ぺいする……みたいな行動原理で動きます。

 そのうえ自分が優れているという強烈な自負があるので、自分の住む村のなかで『かわいらしくお行儀のいい女の子』であるための努力を惜しみません。

 

 これは他者から見ると異様に映ることで、実際それに驚いたり嫌悪したり、そういう描写もあったりします。

 

 しかしあくまでも、クリシェには共感性がないだけであって悪人ではありません。

 自分に利益を与えてくれる人(例えば母親、父親、祖父など)には自分なりの最大限をお返しするという、『やさしさ』があります。そうあるのが社会であるのだと理解して、平穏に生きていることを好ましく思っています。

 そうならないのはあらすじの時点で明らかではありますが……

 

 さてそんな彼女の周りには、とても素敵な人物たちがいます。

 歪な性質を有する彼女を、けれど心から愛し、歪さを抱えながらも『普通』に生きられるようにと根気強く接してくれた母親がその筆頭です。

 そのおかげで彼女は社会という人間の関りを理解して、不完全ながらもそこに溶け込んで生きることができるようになりました。

 

 またのちに出会うベリーという名のメインヒロイン―――彼女もまた母のようにクリシェの歪を愛情で包み、そしてクリシェ楽しいとか、おいしいとか、だとか、そんな感情を教えます。

 共感性の欠如し、物事を合理と理性で捉えるあたまのおかしな少女には、しかし確かに大切な人を慈しみ、愛する心があるのだと諭します。

 

 こういった人物によって、クリシェ幸せを知ります

 この物語における『幸せになる』というのは苦難や試練を乗り越えた果てに幸せを手にするというだけではなく、彼女自身が、そばにあった幸せというものに気が付くという意味合いもあるのかもしれません。

 

”―――少し頭のおかしな少女が優しい人間に囲まれて、幸せを見つけていく。そんな過程を描いたお話。” 

 

小説家になろう【少女の望まぬ英雄譚 ※本編完結】あらすじより引用

少女の望まぬ英雄譚 ※本編完結 (syosetu.com)

 

 要するに、この文章以上に今作を語るものもそうはなさそうです。

 

 ちなみにこの作品ですが、まずまずの残酷描写があるので苦手な方はお気を付けください。一話をお読みになって、ちょっと無理かもと思ったら残念ながら向かないかもしれない……悲しいですが……

 

 以上、私の大好きについてでした。

 次の大好きでお会いしましょう。